素敵と嫌気
「近くに行こうかなと」
「じゃあ夕飯でも食べようよ」
彼女のメッセージに呼応して、逢うことが叶った。
逢う度いろんな話をするのだけれど、中心になるのはやはり仕事の話。その間に話を誘導して私的なことをさりげなく。このところの会話のトークラインはだいたいこんな感じ。
そんな話をしているとき、話の流れから彼女がこんなことを言った。
「仕事で素敵な相手には、仕事だけの関係にしたい。そこを超えてしまうと、嫌な部分が見えてきてしまうから」
このところ行動や表情、仕草が彩られてきた彼女が初めて漏らした本音。これが多分、長い時間なかなかその衝動を突き動かせない原因だと理解した。
今までのボクならこれを聞いて試合終了。なんだろうけど、ずっと解けなかった謎がわかったことで、少し安堵したし、今だからこそ、この本音が聞けたと思ってる。そんな彼女が益々愛しいと思ったが、少しだけ、少しだけその衝動を突き動かせたのかもしれない。
でも、ここで何かを押したところで彼女は変わらないだろうし、変わることなんか求めてはいけない。変えようとも思ってはいない。彼女が本当の気持ちに気が付いて、その先にどんな景色を観るか。今はそれだけだと、思う。